ニュースの概要
Newscast.jpが報じた市場調査によると、日本の遠隔医療市場は2025年以降、年平均成長率(CAGR)18.70%で拡大する見通しである。2034年には米ドル換算で8.2十億ドル、日本円にしておよそ1兆2,000億円前後に達すると予測されている。背景として挙げられたのは、高齢化の進行、地方での医師不足、スマートフォンの普及、そして新型コロナ禍で一気に広がったオンライン診療の定着である。調査は、診療、遠隔モニタリング、医療相談、教育など複数の用途に分けて市場を捉えている。今回の予測は一社の見立てにすぎないが、年率二割近い成長が九年間続くという前提は、医療分野でも例外的に強気な数字だといえる。
引用元: 日本遠隔医療市場、18.70%のCAGRで成長し、2034年までに米ドル8.2ビリオンに達すると予測(Newscast.jp)
分析・見解
年18.7%成長が九年続くと、市場は約4.5倍になる
年率18.70%で九年間伸びると、規模は単純計算で約4.5倍になる。たとえば2025年の市場が約1.8十億ドルなら、2034年に8.2十億ドルへ届く計算である。この数字を「速い」と見るか「現実的」と見るかは、何が成長を引っ張るかで変わる。
私は、初診のオンライン診療そのものより、慢性疾患の継続管理が主役になると見ている。糖尿病や高血圧の再診は、血圧や血糖の数値さえ届けば成り立つ。通院にかかる半日を省ける価値は、患者にも勤務医にも大きい。
成長を左右するのは技術より診療報酬と制度の設計
日本では2022年にオンライン診療の初診が恒久化され、診療報酬上の位置づけも整理された。それでも、対面診療より点数が低い項目が残り、機器導入の費用を回収しにくい医療機関は多い。ここが、米国のように民間保険会社が主導して遠隔医療が広がった国との大きな違いである。
欧州の例を見ると、デンマークは国の主導で在宅モニタリングを全国展開し、再入院率を下げた実績がある。日本も同様に、自治体や保険者が費用対効果を示せれば、一気に採用が進む余地がある。
見落とされがちな支え手は看護師と薬局である
遠隔医療は医師と患者の二者だけでは動かない。血圧計の使い方を教える人、薬を届ける人、通信が不安定な高齢者を支える人が要る。実際、へき地で成果を出している事例では、看護師が患者宅や診療所に同席する「D to P with N」という形が多い。
薬局も重要だ。オンライン服薬指導と配送が整わなければ、診察が終わっても治療は完結しない。市場の伸びは、医師の画面の外にいる職種がどれだけ巻き込まれるかに左右されるはずだ。
予測を割り引いて読むべき三つの不確実性
第一に、予測値は調査会社ごとに大きく異なる。同じ日本市場でも、定義が広い調査と狭い調査では数倍の差が出る。第二に、診療報酬の改定は二年ごとに見直され、方向が変われば成長率は簡単に動く。第三に、医療機関側のIT人材不足がある。
私は、18.70%という数字を鵜呑みにせず、「年15%前後でも十分に大きい市場」と捉えて計画を立てるのが堅実だと考える。控えめな前提でも成り立つ事業だけが、制度変更の波を乗り越えられる。
ビジネスへの影響
医療機関は再診の遠隔化から小さく始めるのが現実的
新規にオンライン診療を導入する診療所は、初診より再診の患者から始めると失敗が少ない。理由は、本人確認や既往歴の確認が済んでいるため、診察の質を保ちやすいからである。まず月に20〜30件の再診枠で試し、予約から会計までの流れを整えるとよい。
機器は高価なものを揃えなくてもよい。患者自身のスマートフォンと、家庭用の血圧計や体重計の数値を送る仕組みで、慢性疾患の管理は十分に始められる。
参入企業は医療機関の人手不足を解く立場で売る
医療向けのソフトウェアやサービスを提供する企業は、「診察の画面」だけを売っても伸びにくい。現場が困っているのは、予約調整、問診の入力、処方箋の連携といった周辺業務である。事務作業を一人分減らせると示せれば、費用に敏感な診療所でも導入しやすくなる。
また、自治体と組んだ実証は、導入効果の数字を作りやすい。通院回数の減少や再入院率の低下を一年分そろえれば、他地域への横展開の強い材料になる。
投資・事業計画では成長率を二段階で置いて検討する
事業計画では、予測どおりの18.70%と、控えめな12〜15%の二本立てで収益を試算したい。診療報酬の改定がある年は、売上が一時的に伸び悩む場面も想定しておく必要がある。固定費を抑え、改定の結果を見てから人員や設備を増やす順序が安全である。
