電子健康記録

カテゴリ: デジタルヘルス・プラットフォーム

電子健康記録(EHR)とは

電子健康記録(EHR:Electronic Health Record)とは、一人の患者の生涯にわたる健康・医療情報を、複数の医療機関や介護施設で共有・活用できるデジタル記録のことです。一つの病院内だけで完結する「電子カルテ(EMR)」より広い概念です。

出生時の記録から、予防接種歴、アレルギー、過去の手術、服薬情報、そして最期の看取りの記録までが一本につながることで、初めて会う医師でも患者の背景を即座に把握し、最適な治療を提供できます。

概要と重要性

「情報の分断」が医療事故や非効率を生んでいます。お薬手帳を忘れたために飲み合わせの悪い薬を処方されたり、転院するたびに同じ検査をやり直したりする無駄を防ぎます。

  • 救急時の救命率向上: 意識不明で搬送された患者の既往歴やアレルギーをEHRで瞬時に確認できれば、救命率は飛躍的に上がります。
  • 災害時の医療継続: 東日本大震災などで紙カルテが流失した教訓から、クラウド上にデータをバックアップするEHRの重要性が再認識されました。

最新動向と技術的詳細

HL7 FHIRの採用: 異なるメーカーの電子カルテ同士でもデータ交換ができるよう、国際標準規格「FHIR(ファイア)」に基づいたEHR構築が日本でも義務化されつつあります(全国医療情報プラットフォーム)。

ブロックチェーン技術: 改ざんが許されない医療データの真正性を担保しつつ、患者自身が「誰にデータを見せるか」をコントロールする権限管理(アクセス権制御)にブロックチェーンを使う試みも始まっています。

AI・エージェントとの関わり

EHRのデータは膨大すぎて人間には読み解けません。AIエージェントが、数百ページに及ぶEHRの履歴から、今回の診療に関連する重要な情報だけを自動抽出してサマリーを表示します。「20年前に〇〇薬でアナフィラキシーを起こしています」といった警告を出すのもAIの役割です。

トラブル事例と対策(失敗例)

事例1:入力負荷の増大
詳細な記録を求めすぎるあまり、医師が画面ばかり見て患者を見なくなる問題(Click Fatigue)。AI音声入力や、テンプレート機能の充実による入力支援が必須です。

将来展望

EHRは「全国民の共有財産」となります。匿名加工されたEHRデータが研究用ビッグデータとして活用され、新しい治療法や新薬の発見を加速させるエコシステムが完成するでしょう。

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